広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(ネ)55号 判決
控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人が昭和二三年九月一七日した訴外石井益夫に対する滞納処分による差押物件のうち別紙第一、二目録記載物件の差押処分を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。旨の判決を求め、被控訴人は、本件控訴を棄却する。控訴費用は、控訴人等の負担とする。との判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、控訴人等は、当審では本件訴が通常の民事事件訴訟と行政事件訴訟のいずれであるかの区別については主張しない。控訴人等は、主張の差押処分につき審査の請求をしていない。旨陳述をし、被控訴代理人において、仮りに本件訴が行政事件訴訟であるとしても、控訴人等は右差押処分につき審査請求をすることなく出訴したものであるから、本件訴は、訴訟要件を欠く不適法な訴である。旨述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
三、理 由
職権を以て調査するに、控訴人等は、要するに本訴において昭和二三年九月一七日被控訴人が訴外石井益夫に対する国税徴収法に基く滞納処分として差押えた物件のうち、別紙第一目録記載物件は控訴人平木静江の所有物件であり、又同第二目録記載物は控訴人石井照海の所有物件であるから、右の控訴人等の所有物件に対してなされた本件差押は無効の行政処分である旨主張し、本件差押処分の取消を求めるというにある。してみると、本件差押処分が国の行政庁である被控訴人のした公法上の処分であつて、本件は、その無効を原因としてこれが取消を求めるものであるから、通常の民事事件訴訟でなく、いわゆる行政事件訴訟であることは明白である。(控訴人等は、原審において本件が民事訴訟法による訴である旨述べているが、訴の性質如何は、当事者の陳述によつてきまるものではなく、前記のように訴それ自体により判断すべきものである。)ところが、本件は、行政事件訴訟ではあるが、行政事件訴訟特例法第二条の訴には該当しないから、同法第三条の規定の適用がなく、被控訴人に本件被告としての適格があるかどうかが問題となる。しかし、同法第三条の規定は、その趣旨に照らし同法第二条の訴以外の行政事件訴訟に準用すべきものと解すべきであるから、本件にも同条を準用すべきものとする。すなわち、同法第二条の訴以外の行政訴訟においても、理論上、その被告たるべきものは、当該行政処分の主体である国又は公共団体ではあるが、その行政処分をした行政庁を被告としても、該行政処分が判決により確定すれば、これによつて実質上権利義務に影響を受けるものは、結局当該行政処分の主体である国又は公共団体であつて、結果において国又は公共団体が被告とされた場合と差異がないばかりか、直接当該行政処分をした行政庁に形式的に手続上の当事者適格を認めて攻撃防禦の方法を尽させることが訴の性質から却つて適当でもあることは、同法第二条の訴の場合と同様であつて、処分行政庁の被告としての当時者適格の有無に関し、同法第二条の訴とそれ以外の行政事件訴訟との間に特に区別を設ける理由がないから、同法第二条の訴以外の行政事件訴訟には同法第三条の規定を準用し、直接当該行政処分をした行政庁に被告としての適格を認めるのを相当とする。したがつて、本件に同法第三条の規定を準用し、被控訴人に本件被告としての当事者適格を認むべきである。然らば、これと結論を異にして被控訴人の本件被告としての適格を否定し、本件訴を不適法として却下した原判決は、すでにこの点において失当であるから、爾余の判断を省略し、原判決を取消すべきものとする。よつて、民事訴訟法第三八八条の規定を適用し、主文のとおりに判決する。
(裁判官 植山日二 池田章 裁判官宮田信夫は、差支えにつき署名押印ができない。)
(別紙省略)